4章1節 実践神学とは何か

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初版 2008年7月6日

 実践神学は、聖書学・歴史神学・組織神学などの基礎研究の成果を、みことばに生き、神を礼拝する生涯に生かしていく分野です。かつては、「牧師養成や牧師の実践に関する分野」と狭く理解されていましたが、今では「教会全体の実践に関する分野」と理解するのが通説で、さらに広く「信仰の実践(キリスト教的実践)全般に関する分野」と理解するのも有力です。

 序章1節の「2. ひとまずのまとめ」でも述べたように、「神学とは、みことばに生き、生きる姿をとおして福音を宣べ伝えること」と定義した場合、神学諸科の営みは、究極的にはみことばに生きるという一点に向かっていくはずです。みことばに生きなければ、神を知るということもないからです。神学諸科は日々みことばに生きる実践に用いられ、日々の実践は神学諸科の問題提起や解決の糸口にフィードバックされていく。「神を知り、神について語る」一連の神学の営みは、そういう有機的な一体性のなかにあります。その一体性(サイクル)のなかにあって、実践のための実践神学は、ひとつの区切り、画竜点睛と言えるでしょう。

 実践神学に何を含めるかは、他の分野と同じように諸説ありますが、プロテスタントで一般的なものとして、礼拝学説教学宣教学牧会学などがあります。神の愛と救いの恵みを知ったとき、礼拝へと促されます(礼拝学)。このすばらしいおとずれを友人にも伝えたくなります(宣教学)。子どもたちにも教えたくなります(教育学)。キリストをかしらとして、信じた人たちが集まり、互いに愛し励まし合いながら、教会を築いていきます(牧会学)。この他、神への信頼と感謝を、音楽や絵画、教会建築、文学などによって表現することもあるでしょう。
 通説的な「教会固有の実践」に限定せず、「信仰の実践全般に関する分野」と理解すると、どんどん広く学際的に考えることができます。この場合、「何でもアリ」状態になるので、分類としては機能しなくなるおそれもありますが、他方で、人工的な学問分野の壁を取り払ったところで生まれる新しいアイディアの可能性も考慮にいれるべきでしょう。