本書の目的は、おごり高ぶるアッシリアへのさばきの宣告です。預言者ナホムの活躍した紀元前7世紀中葉、南王国ユダは、北王国イスラエルを滅ぼした凶悪残忍なアッシリア帝国の脅威にさらされていました。アッシリアの首都ニネベは、ナホムの預言の約150年前、ヨナの宣教により国をあげて悔い改め、救われた都市でした。しかし、ナホム時代のニネベは以前よりもさらに邪悪な民で満ちていました。ナホムは、安泰を誇っていたアッシリアに向かって、ニネベの徹底的な荒廃を預言したのです。このナホムの預言から30数年後、強大な都市ニネベは、バビロン・メディア連合軍により崩壊(紀元前612年)し、今は砂漠の廃墟となっています。
神は、その御顔を求め、従うすべての者には限りなく憐れみを注がれますが(1章3・7節)、逆らう者には復讐される神です。アッシリアをさばく神は、選民イスラエルの不義についても公正なさばきを下されました(1章4節)。神の慈愛と忍耐を軽んじ、真理に従わず、不義に従うすべての者に、神はご自身の怒りと裁きを下されます。私たちも例外ではありません。
「あなたの傷は、いやされない。あなたの打ち傷は、いやしがたい・・・」(3章19節)。ニネベの徹底的、絶望的な崩壊と対比させて、ナホムは、神が主により頼む者を救われるという慰め(「ナホム」は慰めという意味)をも語っているのです。
「主は怒るのにおそく、力強い」「主はいつくしみ深く、苦難の日のとりでである。主に身を避ける者たちを主は知っておられる」(1章3・7節)。