これまでに登場した預言者アモスとホセアは紀元前8世紀の中頃に、北王国イスラエルに現れた預言者です。これとほぼ同時代、20〜30年遅れて、南王国ユダにイザヤとミカという2人の預言者が立ちました。
預言者ミカはエルサレムの南西30〜40kmにあるモレシュテ・ガデという海岸よりのユダの平地の村出身です。職業は農夫であったようです。ミカは田舎のモレシュテの人でした。父親の名に言及されていないことから、ミカは身分の高い人ではなかったようです(イザヤは首都エルサレム出身で高い身分にありました)。神様は様々なタイプの人、様々な社会的地位の人を預言者として立てました。
1章1節にあるように、彼の預言者としての活動範囲は、ユダのヨタム王(紀元前750〜732年)、アハズ王(紀元前731〜716年)、ヒゼキヤ王(紀元前729〜687年)の治世下です。
この時代、イスラエル、ユダの両王国は経済的豊かさの頂点に至りましたが、霊的には最も廃退した危機的な状況でした。アハズ王は偶像を崇拝して国の宗教の純潔を乱し、その当時シリヤとイスラエルの連合軍がユダを攻めようとしたため、アッシリアの臣下となって、その保護を求めました。預言者イザヤはこの政策を、不信仰で神に対する信義を捨てるものであると責めましたが、ミカの見た罪悪は、国際政治とか軍事よりも、社会道徳の荒廃でした。
1〜2章は、両王国の首都、サマリヤ(北王国)とエルサレム(南王国)へのさばきの警告です。この国、国民の罪が首都にあらわれています。北のイスラエルも南のユダも神に背いて罪を犯したために、外国の軍隊の侵入を免れないことが宣言されます。
ミカが指摘した社会の腐敗の具体的内容を説明しているのが2章です。権力と富を握っている支配階級の罪が指摘され、さばきが示されます。2章12〜13節は、さばきに耐えて残った者たちを、神が集めて解放するという預言です。この預言は、単に捕囚からの解放に留まらず、終末的な状況を指し示しています。
ちなみに、神のさばきと憐れみが繰り返し語られ、それが波のようであるのが多くの預言書の構造です。1〜2章を見ると、はじめに罪を指摘し、その後でその国民の復興を述べています。
3章〜5章も、だいたい同じ構造が見られます。
3章1節からは、ミカの政治的支配者に対する非難です。3章5節からは、預言者に対する皮肉です。「歯でかむ物」とは食べ物のことです。食物を口にあてがわれると良い預言をし、彼ら預言者におべっかを使わない、食物をくれない者には悪い預言をする。これは偽預言者なのです。3章8節でミカは、自分は主の霊によって力を得ているから罪は罪だと指摘できると言っています。9節からは政治家と預言者を総括して言っています。
4章10節は、ミカの預言を簡潔にまとめています。民は、自分たちの罪ゆえに今はバビロンの捕虜になっていく、どうしても滅びは来るが、悔い改めるなら、バビロンで滅びることなく、そこから救われ、連れ出される、と。