「ヨナ」とは、ヘブル語で「鳩」の意味です。人間的な良い属性(素直・純粋)の象徴と考えられます。ヨナは、真の神の言葉を預かって、人々にそれを伝える預言者でした(第二列王14章25節のヨナと同一人物)。ヨナが活躍した時代は、ヤロブアム2世の時代(紀元前790〜749年)です。ヤロブアム2世は、政治的・軍事的に成功した王でしたが、聖書には主の目の前に悪を行った王として記録されています。国が豊かになればなるほど、イスラエルの民は偶像礼拝と不道徳に身をゆだね、宗教的に堕落していったのです。
ヨナ書は預言者の行動の記録がメッセージとなっています。
1. 神の宣教から逃げるヨナ(1〜2章)
2. しぶしぶ神の宣教を果たすヨナ(3〜4章)
神はヨナを召して、イスラエルの敵国アッシリアの首都ニネベに遣わし、その悪のゆえに滅ぼすことを伝えようとなさいました。しかし、ヨナは神の任務を拒絶して逃げます。神は天地を揺り動かしてヨナの行く手を阻みました。ヨナは3日3晩、大魚の腹の中で過ごし、悔い改めます。神は魚に命じてヨナを吐き出させ、再び彼を遣わしました。ヨナも今度はニネベに行き、さばきを宣告します。ニネベの人々は悔い改め、神もニネベを滅ぼすことを思い直しました。ヨナの告白した(嘆いた)とおりです。「あなたが情け深くあわれみ深い神であり、怒るのにおそく、恵み豊かであり、わざわいを思い直される」(4章2節)。
異邦人の恵みに対する鋭敏さが、イスラエル人の頑なさと対比されているゆえ、イスラエルにとってヨナ書は挑戦的です。救いへの妬みさえ掻きたてます(ローマ11章11〜14節)。
「神がニネベを、こんなにエネルギーを注いで愛し救おうとされるのなら、ましてやご自身の選んだ民イスラエルのことは、どれほどに愛しておられることだろう! 不道徳な異邦のニネベでさえ、さばきの宣告を受けて悔い改めたときに、あわれみのうちに赦され、救われたのなら、神の選びの民が、――たとえ不道徳に身をゆだね堕落していようとも―― もし悔い改めるなら、神はどれほどの恵みをもって赦してくださることだろう! イスラエルよ、帰れ!」