アモン人ナハシュが同じヨルダン川の向こうにあるヤベシュ・ギルアデの人々を襲った時、ヤベシュ・ギルアデの人々はサウルのもとに助けを求めた。サウルに「神の霊が激しく下った」(6節)。サウルはイスラエルとユダのすべての地域から兵士を募ったところ、33万人が集まった。これが神の導きであることを知ったサウルは、ヤベシュ・ギルアデの使者に「あすの真昼ごろ、あなたがたに救いがある」と伝えた。
翌日、サウルはアモン人の陣営を夜明けから昼まで襲い、アモン人を壊滅させ、ヤベシュ・ギルアデを救った。このことは、ヤベシュ・ギルアデの人たちに、サウルへの感謝の思いを長く持たせることになった。サウルが戦死した時、ヤベシュ・ギルアデの人たちは城壁にさらされていたサウルの死体を取り外し、ヤベシュに運んで葬り、断食をして悲しんだ(31章12〜13節)。
この戦いによってサウルの力が明らかになった。サウルが王になることに反対した者たちが殺されそうになった時、サウルの「主がイスラエルを救ってくださった」という神への信仰表明により、その命が救われた。遅れていたサウルの王権創設が、サムエルの指導により宣言されることになった。
サムエルは民に、自分が年をとり引退の時が来たこと、自分がイスラエルの指導者として誠実に務めてきたこと、そして今、民の要求どおりイスラエルに王を立てたことを語った。しかしサムエルは、出エジプトの時代から今に至るまでイスラエルを治めてきたのは神であることを思い起こさせた。王は立てられたが、イスラエルの真の王は神であり、これからも神に従い、心を尽くし、誠意をもって神に仕えるよう民に求めた。
サウル王とペリシテとの戦いが始まった。イスラエルの兵士の装備は、ペリシテに比べて貧弱であった。兵士がギルガルに集合した時、兵士の士気が上がらず、サウルは何とかこの状況を打開しようと、神のことばを無視して、サムエルが来る前にサウル自らいけにえををささげた。ちょうどその時、サムエルはやってきた。サムエルは、サウルの軽率な行為に対して、「あなたは主の命令に従わなかった。あなたの王国は立たない。神は別の人を王として立てる」と宣告した。神によって立てられたサウルの王国は、神のことばに従わなかったために、サウル1代のみの王国に終わることになるのだった。