長らく(38年間)セイル山(荒野)を放浪したイスラエルは、カナンに向かいます(3節)。しかし彼らは南側からカナンに入ることは断念し、ヨルダン川東側から、エドム、モアブ、ヘシュボン、バシャンを貫く「王の道」(民数20章17節)と呼ばれる大路を北上し、カナンを目指そうとしました。
「同族の領土内」(4節)はエドムのことで、セイル山はエドム領内にあります。神は、ヤコブの兄エサウとその子孫にエドムを与えるために、先住民「ホリ人」を追い出し、彼らの所有地としたのだから、彼らと争ってはならない、と命じました(5節)。
イスラエルはエドムを迂回してモアブに向かいますが、次のモアブとアモンは、アブラハムの甥ロトの子孫に相続地として与えているので、戦いをしかけてはならない、と命じられました(9・19節)。これらの国には「レファイム」と呼ばれ、強大な民であって数も多く、イスラエルが恐れるアナク人のように背の高い民が住んでいました(21節)。モアブ人は彼らを「エミム人」と呼び(11節)、アモン人は「ザムズミム人」と呼びました(20節)。
エサウやロトの子孫のためにさえ、神はホリ人やレファイムを追い出し、その地を彼らの所有としたのです(12・21節)。神は、エサウとロトの相続地を行き巡らせることで、イスラエルに約束の地を渡すという保証を見せたのでしょう。そしてついに神は「ヘシュボンの王エモリ人シホンとその国とを、あなたの手に渡す。占領し始めよ」(24節)と命じられ、イスラエルは、シホンに勝利し、南はアルノン川から北はギルアデに至るまでを勝ち取りました。
さらにイスラエルが北上すると、バシャンの王オグとその民がイスラエルを迎え討つために出てきたので、イスラエルは彼らを一人残らず聖絶し、バシャンの地を占領しました。神は、アルノン川からギルアデ山地の半分までの町々をルベン人とガド人に与え(12節)、ギルアデの残りとバシャンの全土はマナセの半部族に与えました。オグはレファイムの生き残りと言われ(11節)、バシャンの全土はレファイムの国と呼ばれています(13節)。イスラエルは今まで恐れてきたレファイムについに勝利することができたのです。
エドムやモアブを迂回させられたことは遠回りでした。しかし、近道することがすべてではありません。神の約束を信じるには時間がかかることもあります。イスラエルは遠回りして、神が約束の地を与えてくださる保証を見させられたからこそ、レファイムに立ち向かう勇気が与えられ、勝利しました。
私たちはしばしば恐れから逃げだしたくなることがありますが、逃げるよりも、時間をかけてでも神の約束を信じて、信仰で立ち向かい、乗り越えることによって、初めて前に進むことができるのです。