パウロの言葉に励まされて、船はアド二ヤ海を漂って、14日目の夜に、ようやくどこかの陸地に近づいたように感じました。彼らは、水位を測りながら進み、暗礁に乗り上げるかもしれないという不安のなかで、夜明けを待ちました。その間、水夫たちが逃げようとしたので、パウロの言葉を聞いた兵士たちが、小舟をつないでいた網を断ち切って流してしまいました。
夜が明けかけたころ、パウロは一同に食事をするように薦めました。このあたりから、船の指揮官はすっかりパウロに移っていたようです。パウロはここで再び、「あなたがたは助かります」と言って、全員が助かることを約束しました。このパウロの言葉に励まされ、276名の乗組員は一致して船を無事に浜辺に上陸せようと協力していきました。
すっかり夜が明けると、どこかわからないが陸地が見えてきたので、そこに船を乗り入れようということになりました。ところが、潮流の流れ合う浅瀬に乗り上げて、船は座礁してしまったのです。そこで兵士たちは慌てて、このどさくさに囚人たちが逃げ出さないように、いっそ彼らを殺してしまおうと相談しました。しかし、百人隊長がその計画を退けたのです。
こうして、なんとか全員が無事に上陸することができました。彼らがたどり着いたのは、マルタという島でした。幸いその島の人々は親切で、パウロたちをもてなしてくれました。そこで、パウロの手に1匹のまむしが取りつきますが、結局、何の害も受けませんでした。それを見た人々は、「この人は神さまだ」と言い出す始末でした。
また、マルタ島には、ポプリオという首長がいました。パウロたち一行はそこへ招待され、3日間、もてなされました。そこで、ポプリオの父が病の床に就いていたので、パウロは主に祈って、その病気を治しました。島の他の病人たちもパウロを訪ねて来て、治してもらいました。こうしてパウロたちは、ますます人々から尊敬されていったのです。
「突然の嵐」、「船の難破」、こうした人間的には辛い経験を通して、パウロはマルタ島での証しができました。パウロは、こう言います。「神を愛する人々、すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、神がすべてのことを働かせて益としてくださることを、私たちは知っています」(ローマ8章28節)。私たちも、辛い経験をすることがありますが、どこまでも神の最善のご計画を信頼していく者とならせていただきたいものです。