さらに、パウロの証しは続きます。ここからは、パウロの回心について、また回心した後の生活について語られていきます。パウロの回心の記述は、9章、22章に続いて、3回目です。それぞれの証しは、同じ事柄が述べられていても、表現が少しずつ違っています。
パウロはまず、ダマスコでの出来事から語り始めました。ここでは、主がパウロにヘブル語で語りかけられたこと、また「とげのついた棒をけるのは、あなたにとって痛いことだ」と言われたことが新しく記されています。パウロはそこで、自分が迫害しているのはイエスご自身であることを知らされたのです。
そして、主はパウロに、「わたしは、この民と異邦人との中からあなたを救い出し、彼らのところに遣わす」という使命をお与えになりました。こうしてパウロは、人間的な熱心さからではなく、天からの啓示であるがゆえに、その使命に忠実に従って、あらゆる人々に伝道してきたことを述べました。
すると、ここまでパウロの弁明を聞いていたフェストが大声で、「気が狂っているぞ」と叫びました。パウロはそんなフェストのことはあまり気にせず、アグリッパ王に向かってするどい言葉を投げかけました。するとアグリッパ王も当惑して、「あなたはわずかなことばで、私をキリスト者にしようとしている」と、なんとも苦しい返事をしたのです。
「証し」というのは、パウロが述べたように、回心する前、回心した時、回心した後という3つに分けることができるでしょう。パウロは、キリストに出会って、劇的な回心を遂げ、新しい人生を歩み始めました。願わくは私たちも、自分の回心の体験について説明を求める人には、誰にでもいつでも弁明できる用意をしておきたいものです。