イエスは午前9時に十字架につけられ(マルコ15章25節)、午後3時ごろ、息絶えました。全地が暗くなったのは、出エジプトの地で神が裁きのために下された暗黒と同様、罪に対する神のさばきの象徴です。イエスは十字架の上で7つの言葉を残されましたが、マタイによる福音書では「わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか」(46節)のみ記されています。天の父との親密な交わりにあったイエスが見捨てられたのは、人の罪を背負い、のろわれた者となったからです。それでもなお、イエスは「わが神」と呼び、父に対する信頼を捨てませんでした。十字架の上でイエスの口から出た「完了した」(ヨハネ19章30節)という言葉は、私たち全ての人の罪のため贖いが達成されたことの宣言でした。イエスの死は、罪人が負うべき死刑の罰を代わって負われた「いけにえ」(ヘブル9章23〜28節)、人の罪に対する神の怒りを取り除く「なだめの供え物」(ローマ3章25節)、神と人の間にある壁を取り除く「和解」の行為(エペソ2章13〜16節)、束縛と不自由の状態から代価を払って解放する「贖い」なのです。
イエスが息を引き取られたとき、3つの象徴的な現象が起こります。
夕方になって、イエスの死体はイエスのひそかな弟子でありサンへドリンの議員である金持ちのヨセフによってひきとられました。イエスの体は、没薬とアロエを混ぜ合わせたもので塗られ、きれいな亜麻布で包まれ、ヨセフの新しい墓に葬られました。「彼は富む者とともに葬られた」(イザヤ53章9節)の預言が成就したのです。
イエスが死なれた翌日、祭司長とパリサイ人たちは、イエスの弟子たちが死体を盗み出して「イエスが死者の中からよみがえった」と民衆に言うことを恐れ、ピラトのところへ集まり、墓の番をしてもらいたいと申し出ました。ピラトは墓の石に封印をして番兵に番をさせました。