イエスは、荒野で悪魔から試みを受けた。旧約の神の子らイスラエルは荒野で試みられてことごとく誘惑に負けた。真の神の子としてイエスが再び荒野で試みられて、試みに打ち勝つことは、イエスが公に働きを始める準備として重要であった。悪魔の試みに対抗するためにイエスは旧約聖書の申命記から引用している。申命記は、モーセが死を目前にして神の子らイスラエルにした訣別説教であるが、内容的には出エジプト以降のイスラエルの民の足跡を辿っている。神が如何にイスラエルを導き、真実なお方であったか、それにも拘わらずイスラエルはたびたび不信仰に陥り、失敗したことが綴られている。イスラエルの今後の歩みのために貴重な教訓が語られている。特に不信仰の結果、40年間荒野を放浪したこと、その間の失敗、主の真実が強調されている。荒野での40日は、旧約の40年を象徴的に指し示している。だからこそ、悪魔は「あなたが神の子なら、・・・」と三度繰り返して試みている。そして、イエスは三度とも、モーセがイスラエルの民の語った教訓である申命記から応えている。
イエスがナザレからカペナウムに移り住んだことは、イザヤ書9章冒頭の預言の成就とマタイは理解している。暗黒のガリラヤに偉大な光としてイエスは到来した。イエスは公の活動を開始した。ヨハネと同じ使信を繰り返しつつ。