旧約 第33週 詩篇62篇~87篇
BibleStyle.com
日本同盟基督教団
清水聖書教会 牧師
面 曻
2009年10月31日 初版
【日曜】 詩篇62篇~67篇
【詩篇62篇】
● 背景
アブシャロム反逆の時期と言われる。
● まとめ
人はダビデのことを、今にも倒れる城壁・石垣と言う(3節)。
しかし、私は主に信頼する(8節)。
たとえ、目に見えるところ、弱そうでも、神と共に歩む者に恐れはない(6節)。
そのような者に、神は恵み豊かだ(12節)。
【詩篇63篇】
● 背景
ダビデはアブシャロムに追いやられた。荒野にいたときの状況(参照:第二サムエル記15章28節)。
● まとめ
一見悲しい経験であった(王宮→荒野。1節)。
しかし、そのなかに、神が臨在してくださった(2~3節)。
王宮にいれば、当然味わうことのない深い神の恵み、いつくしみ、その臨在がある。
【詩篇64篇】
● 背景
個人の嘆きの歌。内容的には保護の歌。
● まとめ
前半と後半が綺麗な対比をなしている。
前半(1~6節)、悪事をたくらむ者の一時的な繁栄。
後半(7~10節)、悪事をたくらむ者の無残な姿。
神をほめたたえている。 ※ ダビデの詩の特徴を良く捉えている。
【詩篇65篇】
● 背景
国家存亡の危機のとき。 ※ ダビデの生涯から、際立ったもの(時代)がない。
● まとめ
神のダビデに対する、圧倒的な力、不思議、そして静寂(1節)。
神の奇しい業は、遠い国々にまで影響を及ぼす(5節)。
【詩篇66篇】
● 背景
セナケリブ率いるアッシリヤ軍の突然の敗走のとき(参照:第二列王記18~19章)。
● まとめ
神の奇しい御業の賛美(1~8節)。
イスラエルの民は、そのような神の御業のなかで、救われ、訓練された(9~12節)。
私は、神の奇しい業のときに祈っていた。そして、それが本当に聞かれた(13~20節)。
神をほめたたえます。
【詩篇67篇】
● 背景
時代的背景は特定できない。祝祭歌。
● まとめ
世界の民に向かって、「神をほめたたえよ!」と呼びかけられておられる。
※ イスラエルの歴史のなかで、世界大の思想が随所で見られる。
ペンテコステ以降、教会が生まれ、世界宣教が開始された。
それ以前に、主は、「世界の民に救い」を、世界大の「神の国」実現に向けて、
着々と事を進めておられた。
【月曜】 詩篇68篇~69篇
【詩篇68篇】
● 背景
オベデ・エドムの家から、ダビデの町に契約の箱が運び込まれる様子が描かれている
(参照:第二サムエル記6章2~18節。なお、5章ではダビデによって南北の統一が図られた)。
行列歌(壮大な勝利の歌)
● まとめ
南北統一をなし、ダビデの町に契約の箱を遷した。これがどれほどの意味を持つか。
1. 地を制圧した(ペリシテ、外の周辺諸国、先住民)。
2. 神殿が一つにされ、イスラエル部族が信仰的に一つにされた。
その喜びを様々なかたちで表現している(正義の神の勝利、自然も歓迎している)。
【詩篇69篇】
● 背景
歴史的に、聖書的に、特定することができない。
● 特徴
1. ダビデの詩には多くの、理不尽な世界と、その到底耐えられないような苦しみが描かれている。
しかし、正義の神は、その理不尽に対して、徹底して挑んでこられる。恐ろしいほどである。
2. (裁き―正義の神)神は愛なるお方である。憐れみに富み、慈悲深い方である。
しかし、不義を持って神から離れ、いつまでもそれを続けるならば
(特に、そのことを勝ち誇るような生き方、傲慢・高慢な生き方)、
神はある限界を超えたとき、その行いに応じた裁きをもって、刈り取り、報いを求めてこられる。
3. (新約に照らし、逃れる道を示すと)これから救われる道は唯一つ、「罪を悔い改めて」、
「私の罪の身代わりになってくださったイエス・キリストの十字架を受け入れる」ほかはない。
● まとめ
正義が踏みにじられる。理不尽な状況。苦しみ、迫害が画かれている(1~12節)。
神に信頼を置いて祈る(13~21節)。
神への正当な審判を求めて祈る(22~28節)。
※ 正しい者に、不当な仕打ちをするとは、神への敵対である(神からの裁きがある)。
しかし、天に目を向けると、他人よりも、神と自分の問題の大きさに、
心は釘付けにされる(29~36節)。
※ 理不尽なとき、それは自分自身の罪が指摘され、信仰の高嶺に導かれるときである。
一方、神の視点は、決して神に敵する者の罪をそのままにはされないお方である。
【火曜】 詩篇70篇~72篇
【詩篇70篇】
● 背景
ダビデ家族へのアマレク襲来と家族の奪還(第一サムエル記30章1~20節)。
そして、サウルの死(第二サムエル記1章1~2節)。これらが、いっぺんに起こった。
● 特徴
40篇と、69、70篇は共通性がある。前半が69篇。後半が70篇。
● まとめ
苦しみのなかからの祈り。たとえ理不尽、迫害あろうとも、信仰者の喜びがあふれている(4節)。
【詩篇71篇】
● 背景
南ユダに住んでいた一部族、レカブ人が捕囚を前にエルサレムに来た。
異教徒なのに、真の神の教えを忠実に守り行っている。
しかし、肝心の南ユダの民は、今にも国が滅ぼされようとするのに、神に添った歩みが見られない。
エレミヤは、このレカブ人を見よ!と警告を与えようとした(エレミヤ書35章)。
※ 「老練な信仰者の祈り」といわれている。
● まとめ
テーマのごとく、老練な信仰者の確信と祈り、証し(1~8節)。
そして、信仰継承を語るにふさわしい祈り(9~14節)。
信仰を守り通した者の深みのある言葉(七転び八起きの信仰。15~20節)。
そして、最後に偉大な神への証と賛美(21~24節)。
※ 若いときは完全主義の傾向がある。良い信仰でも倒れると立ち上がるのに困難がある。
信仰が長い、良い面は、恵まれていても、何時問題が起きるか、という心構え。
【詩篇72篇】
● 背景
ダビデがソロモンに王位継承を祝って作った歌(参照:第一列王記1章30節)。
● まとめ
※ 内容的には王の統治が描かれている。
義と愛に満ちた王への賛美(1~8節)。
世界平和の祈願(9~18節)。
賛美「栄光は地に満ちわたれ」(19節)
【水曜】 詩篇73篇~76篇
【詩篇73篇】
● 背景
歴史的に、聖書的に、特定する事ができない。
この主題と同じような内容は、37、49、94篇と出てくる。
「悪人が栄え、神を恐れかしこむ者が困窮している」
● まとめ
悪徳の栄えに心乱れる姿(1~3節は回顧。4~12節は神を恐れぬ者の姿)。
しかし、それは夢を見ているようなもの、実態のないものと悟る(13~17節)。
結局、神がすべてである(18~25節)。
勝利の告白(26~28節)。
※ 正義の神への信頼(悪への徹底した神の介入)。
【詩篇74篇】
● 背景
エルサレムの壊滅(B.C.587年)、バビロン捕囚の初期に歌われた哀歌。
彼らの心には様々な思いがあった。
(1. 神が選ばれた民を見限った。 2. アブラハム契約は一体、どの様になるか)
● まとめ
※ 全体的に暗い感じを落とす(賛美がない―詩篇の特徴は賛美で締めくくられている)。
神への嘆き(1~9節)。
嘆願と信頼の表現(10~17節)。
最後の訴え(18~23節)。
※ 聖書のなかに、新しいことが起こるとき、その直前は全く暗く、未来の展望が見えない。
そのような構造を見る(出エジプト、王制の出現、イエス・キリストの誕生)。
新しいいのちの誕生に向けて、古きを脱ぎ去っていくようだ。
私達の人生も今、未来が見えない。そのとき、何かが生み出そうとされていることを信じたい。
【詩篇75篇】
● 背景
セナケリブがエルサレム包囲を突然解いたとき。 ※ 不思議な事が起こった。神は生きておられる。
● まとめ
世界の権威、秩序の基は神から来る。(時において、2節。正義において、4~8節)
世界を定める神に感謝(9~10節)。
【詩篇76篇】
● 背景
詩篇75篇と同じ。 ※ 国民の敵に対する勝利を祝う歌。
● まとめ
神の偉大さを表す(1~9節)。
人間の理解を超えて成し遂げられる方への賛美(10~12節)。
【木曜】 詩篇77篇~78篇
【詩篇77篇】
● 背景
特定することが難しい。 ※ バビロン捕囚の頃か、それ以前かもしれない。
● まとめ
苦しい、苦しいと言う(1~9節)。しかし、苦しい元凶は自分自身である(10~12節)。
それがわかり、神の恵みに目を留めるとき、神の祝福が改めてわかる(13~20節)。
※ 神の偉大さを語るとき、出エジプトに心を留めるイスラエル(19~20節)。
【詩篇78篇】
● 背景
時代は特定できない。
● 特徴
国民的賛歌(105・106・136篇)
※ イスラエルの初期の歴史を細かく述べて、
来るべき世代の人々に失敗を繰り返さないように伝えた教訓詩(マスキール)。
● まとめ
※ 内容的には、前半で荒野の放浪、後半でカナン進入以後、ダビデの時代まで扱う。
人間の悪い行いと、神の忍耐と力を、かわるがわる眺める。
教訓の必要性(1~8節)。
民の不従順(9~11節)。
出エジプトの歴史(12~51節)。
エジプト脱出とカナン定着の歴史(52~72節)。
【金曜】 詩篇79篇~82篇
【詩篇79篇】
● 背景
74篇と同じく、B.C.587年。エルサレム崩壊。バビロン捕囚の頃。
● 特徴
74篇は神殿崩壊を悼む哀歌であったが、こちらは民が四散した悲歌である。
● まとめ
イスラエルの悲歌(悲しんでも、悲しんでも、悲しみが追っかけてくる)。
※ しかし、このなかから強烈な祈りが生まれる。
→ イスラエルに団結・底力が生まれる背景となる。
(この信仰復興は、バビロンに連れて行かれた後に生まれる)
【詩篇80篇】
● 背景
アッシリヤ捕囚(B.C.722年)の直後。
● まとめ
※ 南ユダが、同じ神に選ばれた北イスラエルのために祈る。
「元に返してください」(1~3節)
「神の民として繁栄させてくださった。それを切り倒してしまうとは」(4~16節)
「もう一度、神の使命に立ちます。元に戻してください」と祈る(17~19節)。
【詩篇81篇】
● 背景
イスラエル三大祭り、仮庵の祭りを祝う歌。
● まとめ
出エジプトはその出来事そのものがイスラエルに対する神のメッセージ、神に賛美(1~5節)。
エジプトの労役は一瞬にして救われた。イスラエルが選民である本質は、第一戒(6~10節)。
彼らの欲望の気まぐれにもかかわらず、神はイスラエルを最上のもので養った(11~16節)。
【詩篇82篇】
● 背景
ハッキリしない。ウジヤ王のときかもしれない。
ウジヤ王;ソロモンの次に繁栄した。数々の実績を残した。病で倒れた。
理由は、祭司権の侵害。国が繁栄するごとに尊大になり、祭司の忠告に耳を傾けようとしない。
祭壇で香を焚いたとき、大地震があったと言われる。
● まとめ
南ユダを復興させたウジヤ。しかし、尊大さのゆえに国は乱れている(1~5節)。
思い起こせ、自分達がいかなる立場の者か(6~7節)。
(イスラエルによって)世界に平和が来るように(8節)。
【土曜】 詩篇83篇~87篇
【詩篇83篇】
● 背景
南ユダ、ヨシャパテ王の時代に書かれた詩。第二歴代誌20章1~12節が背景。
● 特徴
6~8節のイスラエルに敵対する広範な連合軍は、聖書のなかに見当たらない。
● まとめ
絶体絶命のときも正義なる神に祈る。
歴史に訴えて祈る(9~12節)。正義の神に祈る(13~16節)。
【詩篇84篇】
● 背景
時代的な背景は特定できない。
42篇と同じく、コラ(門衛、歌うたい)が、神の宮から放逐され、また許され戻ってきたときの歌。
● まとめ
再び職に就いた。神殿の歌人(門衛)の喜びを語る(1~4節)。
神と共なる生活の恵、祝福を表す(5~7節)。
※ 「私と神」1対1の豊かな恵を特徴的に表す(10~11節)。
【詩篇85篇】
● 背景
バビロン捕囚の70年が過ぎ、クロスの解放令によってパレスチナに帰ったときの歌。
参照:エレミヤ書25章11節、第二歴代誌36章21節
興奮と、盛んな意気込みで帰ってきた。しかし、故郷は貧しかった。
その荒廃に心はすっかり冷え切った(ユダの残留民が少なからずいた。ハガイ書2章3~4節)。
● まとめ
希望、感謝(1~3節)、落胆(4~7節)。
しかし、神に目を留める。神の義に答えて生きる(8~13節)。
※ 「義」に目を留める帰還したイスラエル。
その後、被支配者として律法に生きる、聖書の民イスラエルの兆候が出ている。
【詩篇86篇】
● 背景
時代的背景を特定できない。
● 特徴
編集詩といわれている。祈りとは何かを教えている。
● まとめ
※ 祈り、それは基本的には、嘆願することである。どのように祈るか。
1. 神の偉大さをたたえる(8~13節)。
2. 自分を取巻く状況(自分の貧しさ、環境の厳しさ)をそのまま信頼し、告げる。
神は、それを覆い包んでくださる(1~7節)。
3. 勝利宣言(14~17節)。
【詩篇87篇】
● 背景
あえて背景を特定するならば、第二歴代誌32章20~23節。
※ アッシリヤのセナケリブが、イスラエル(ヒゼキヤ)と神を、侮辱した。
神に祈り求めたとき、主は使いを遣わして、アッシリヤを全滅させた。
世界の民が主をほめたたえた。
● 特徴
世界平和は主によってなる。
※ キリストによって、救済史完成。
世界宣教の時代を預言(参照:ガラテヤ書3章8節、ヘブル書12章22節)。
● まとめ
シオン(霊的な意味で)は、国々の賛辞の的だ(1~3節)。
ここから霊的な子どもが生まれる(4~6節)。
ここに集う者が、どれほど神に祝福を受けるか(7節)。
※ 詩篇の編集はバビロン捕囚以降に、最終的に編集されたといわれる。
そのようななかで世界の民に救いが、という視点が段々、深まっていくのを見る。
参考文献
- 舟喜順一『聖書註解』(キリスト者学生会出版局、1966年)
- 小林和夫「詩篇(1~89篇)」『新聖書注解・旧約3』(いのちのことば社、1975年)
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