旧約 第17週
サムエル記第一11章~24章

日本長老教会 ゆりのきキリスト教会 牧師
小町 誠一

2009年10月31日 初版

【日曜】 サムエル記第一11章~13章

【11章】

 アモン人ナハシュが同じヨルダン川の向こうにあるヤベシュ・ギルアデの人々を襲った時、ヤベシュ・ギルアデの人々はサウルのもとに助けを求めた。サウルに「神の霊が激しく下った」(6節)。サウルはイスラエルとユダのすべての地域から兵士を募ったところ、33万人が集まった。これが神の導きであることを知ったサウルは、ヤベシュ・ギルアデの使者に「あすの真昼ごろ、あなたがたに救いがある」と伝えた。
 翌日、サウルはアモン人の陣営を夜明けから昼まで襲い、アモン人を壊滅させ、ヤベシュ・ギルアデを救った。このことは、ヤベシュ・ギルアデの人たちに、サウルへの感謝の思いを長く持たせることになった。サウルが戦死した時、ヤベシュ・ギルアデの人たちは城壁にさらされていたサウルの死体を取り外し、ヤベシュに運んで葬り、断食をして悲しんだ(31章12~13節)。
 この戦いによってサウルの力が明らかになった。サウルが王になることに反対した者たちが殺されそうになった時、サウルの「主がイスラエルを救ってくださった」という神への信仰表明により、その命が救われた。遅れていたサウルの王権創設が、サムエルの指導により宣言されることになった。

【12章】

 サムエルは民に、自分が年をとり引退の時が来たこと、自分がイスラエルの指導者として誠実に務めてきたこと、そして今、民の要求どおりイスラエルに王を立てたことを語った。しかしサムエルは、出エジプトの時代から今に至るまでイスラエルを治めてきたのは神であることを思い起こさせた。王は立てられたが、イスラエルの真の王は神であり、これからも神に従い、心を尽くし、誠意をもって神に仕えるよう民に求めた。

【13章】

 サウル王とペリシテとの戦いが始まった。イスラエルの兵士の装備は、ペリシテに比べて貧弱であった。兵士がギルガルに集合した時、兵士の士気が上がらず、サウルは何とかこの状況を打開しようと、神のことばを無視して、サムエルが来る前にサウル自らいけにえををささげた。ちょうどその時、サムエルはやってきた。サムエルは、サウルの軽率な行為に対して、「あなたは主の命令に従わなかった。あなたの王国は立たない。神は別の人を王として立てる」と宣告した。神によって立てられたサウルの王国は、神のことばに従わなかったために、サウル1代のみの王国に終わることになるのだった。

【月曜】 サムエル記第一14章

 サウルの軍とペリシテの軍の戦いが始まった。サウルの子ヨナタンは、サウルの軍とは別に、道具持ちの若者を連れて単独行動に出た。ヨナタンは大胆にもペリシテ軍の先陣に近づいた。ヨナタンは、「神がわれらに味方してくださる。小人数であっても神がお救いになるのに妨げとなるものは何もない」という信仰に燃えていた。ヨナタンはペリシテ軍が陣を敷く前の崖をよじ登り、そこでペリシテと戦い、一気に20人を倒すという戦果をあげた。ペリシテ軍は、イスラエルに対する恐れによって混乱と疑いが生じ、同士討ちを始めた。一方サウルの軍は、ペリシテの陣営に何かが起こったのを感じ、イスラエルの軍をペリシテの陣に進めた。サウルがペリシテ軍に攻め込むと、それまでペリシテについていた民たちも、隠れていた民たちも、サウルに味方し、共にペリシテを討ち、サウル軍の大勝利に終わった。
 その日、サウルは民に「夕方までに食物を食べる者はのろわれる」という誓いを立てさせていた。それは、ペリシテの戦いに勝つためであった。夜になって疲れ果て、空腹になった民は、ペリシテからの分捕り物を血のついたまま食べてしまった。それは神の前に罪を犯すことであった。
 サウルは、さらにペリシテを追っていこうとした。そのことの導きを神に尋ねても、神からの答えはなかった。サウルは、だれかが罪を犯したためであると考え、くじを引いてそれがだれかを知ろうとした。くじはヨナタンに当たった。ヨナタンは、サウルが立てた誓いを知らずに蜂蜜を食べたことを告白し、ヨナタンは殺されそうになった。しかし民たちは、今日の勝利がヨナタンの活躍のおかげであったことをサウルに訴え、ヨナタンの命は救われた。
 サウルの思いつきのような誓いは、民を苦しめ、ヨナタンが死ななければならないような目にあわせた。主はヨナタンの信仰のゆえに、民の弁護のことばによって助けられた。

【火曜】 サムエル記第一15章~16章

【15章】

 神はサムエルを通してサウルに、アマレクとの戦いに出るように、そして戦いで得た戦利品はすべて神のものとして絶ち滅ぼす(聖絶する)ように命じられた。サウルはアマレクとの戦いに勝利したが、神の命令に従わなかった。神はサムエルをサウルの陣に送った。
 サムエルが着くと、そこはペリシテから奪った牛や羊で満ちていた。サムエルはサウルに「なぜあなたは神の命令に背いて、これらの家畜を生かしておいたのか」と詰問した。サウルは恥じることなく、「主にささげるために生かしておいた」と答えた。サムエルはサウルに告げた。「神のことばに従うことが大切である。神はいけにえよりも神に聞き従うことを喜ばれる。あなたは神のことばを退けたので、神はあなたの王位を退けた」。
 サウルはサムエルに赦しを請うたが、聞き入れられなかった。サウルは、神のことばに聞き従わなかった罪のため、王位から退けられることが決定的となった。これは、サムエルにとっても、神にとっても悲しみとなった。

【16章】

 神はエッサイの息子を王にすることをサムエルに告げた。サムエルはベツレヘムを訪ね、エッサイとその息子たちを招いた。エッサイは連れて来た息子たちをサムエルに紹介した。長男のエリアブを見た時、サムエルは「確かにこの者こそ王に選ばれた者だ」と思ったが、神は「彼の容貌や、背の高さを見てはならない。わたしは彼を退けている。人はうわべを見るが、主は心を見る」と言って、エリアブを退けた。サムエルは、次男、三男と、7人の息子をエッサイから紹介されたが、いずれも神が選んでいないことを知った。サムエルは、ここにはいない末子のダビデを連れて来させた。神はダビデが来た時「さあ、この者に油を注げ。この者がそれだ」とサムエルに言われた。サムエルはダビデに油を注ぐと、主の霊が激しくダビデに下った。
 一方、サウルからは主の霊が離れ、主からの、わざわいの霊がサウルを脅えさせた。ダビデは、サウルがわざわいの霊に脅えさせられた時に、立琴を弾く者として召し出された。ダビデは、サウルから愛され、サウルの道具持ちとして働くことになった。以来、サウルがわざわいの霊に襲われた時、ダビデは立琴を弾いてサウルを慰めた。

【水曜】 サムエル記第一17章

 ペリシテ軍とイスラエル軍はそれぞれ陣を敷き、向かい合った。そこにペリシテから代表戦士が出て来た。彼の名はゴリヤテ、背丈は3m近く、50kgを超える武具をまとっていた。イスラエルの代表戦士と一対一の勝負をして勝敗を決しようというのだ。イスラエルは恐れて、だれも出ようとしない。ゴリヤテは40日間、朝と夕暮れに現れてはイスラエルの陣をなぶり続けた。
 戦場にいた兄たちを訪ねたダビデが、このゴリヤテの叫びを聞いた。ダビデは言った。「この割礼を受けていないペリシテ人は何者か。生ける神の陣をなぶるとは」。それを聞いたサウルはダビデを呼んだ。ダビデは「私は、獅子でも熊でも打ち殺した。あのペリシテ人も同じようになるだろう」と言い、さらに「獅子や熊の爪から私を救い出した主は、あのペリシテ人からも私を救い出してくださるだろう」と、主への信仰をもって戦うことをサウル王に語った。
 サウル王はダビデに戦うことを許し、王の武具を与えようとしたが、それはダビデには大きすぎて役に立たなかった。それでダビデは、杖と石投げを持って、ゴリヤテに向かった。ゴリヤテはダビデを見てばかにしたが、ダビデは「私は、おまえがなぶったイスラエルの神、万軍の主の御名によって戦うのだ」と言って、ゴリヤテに向かって石投げの石を放った。石はゴリヤテの額に命中し、ゴリヤテは倒れた。それを見たペリシテは逃げ出し、勢いに乗って追い立てるイスラエルに打ち破られてしまった。
 サウル王は、自分のところに来ていた立琴を弾くダビデがこのような手柄を立てたので、王の婿として迎えるために、どのような出自の者であるかを将軍アブネルに問いただした。

【木曜】 サムエル記第一18章~19章

【18章】

 ゴリヤテに勝利した後、ダビデの心とサウル王の子ヨナタンの心が結ばれ、ヨナタンは「自分と同じほどにダビデを愛した」と言われるような友情を築いた。
 ダビデはその後、サウル王の戦士たちの長として、行く所どこにおいても勝利を収め、サウルの家来たちと民たちの人気を得ていった。それを知ったサウル王は、ダビデに嫉妬と疑いの目を向けるようになり、ダビデを殺そうと、サウルにわざわいの霊が襲った時、それを静めるために立琴を弾くダビデに槍を投げつけた。それでもダビデはサウルに従い、戦場に出ては勝利を収めるのだった。ダビデの人気は高まるばかりだった。
 サウルは、ゴリヤテとの戦いに勝利した者を婿にするという約束を、ダビデに果たさないままでいた。それでサウルは、ダビデにペリシテとの戦いに行かせ、そこでダビデを殺させようとした。ダビデはこれも難なく果たし、サウルの娘ミカルを妻として迎えた。

【19章】

 ダビデは、サウルが自分を殺そうとしていることをヨナタンや家来たちに告げた。しかし、ヨナタンはダビデを愛しており、サウルにとりなしたため、とりあえずダビデはサウルのもとに帰ってきた。ダビデはペリシテとの戦いに出て大勝利をあげた。またもサウルにわざわいの霊が臨んだ。サウルを慰めるために立琴を弾いているダビデに、サウルはそばにあった槍を再び投げつけた。
 サウルの追及は、ダビデの家にまで向かった。妻ミカルの機転によって逃れたダビデは、サムエルが住むラマに逃れた。サウルはダビデを捕らえようとして、使者をサムエルのところに3度遣わした。遣わされた者たちはみな神の霊によって預言する者となり、ダビデを捕らえることができなかった。4度目にサウルがラマに赴いたが、サウルにも神の霊が臨み、預言者のようになってしまい、ダビデを捕らえることができなかった。

【金曜】 サムエル記第一20章~21章

【20章】

 ダビデは、ラマからヨナタンのもとに帰って来た。ヨナタンはダビデに、父サウルの気持ちが確かにダビデを殺そうとしているかどうかを聞き出し、それをダビデに告げることをダビデと約束した。ダビデが招かれ欠席した新月祭の食事の席で、サウルの怒りはヨナタンに向けられた。ヨナタンは、サウルの「ダビデが生きている限り、おまえもおまえの王位も危うくなるのだ。ダビデは殺さなければならない」ということばを聞いて、怒りに燃えて席を立った。ヨナタンは、ダビデが決してそのようなことをしないと知っていたので、ダビデのために心を痛めた。
 ヨナタンは、サウルの殺意を知らせるため、打ち合わせてあった野原に向かった。合図の矢が放たれた。ダビデが現れ、二人は抱き合って泣き、別れを悲しんだ。主によって結ばれた二人の友情は、ヨナタンの死後も、ヨナタンの息子へとつながれていった(第二サムエル9章)。

【21章】

 ダビデの逃亡生活が始まった。何も持たないダビデは、まず祭司アヒメレクのところに行き、そこで聖別されたパンで空腹を満たし、ゴリヤテの剣を受け取り、敵であったペリシテのガテのアキシュ王のところに向かった。しかし突然現れたダビデに対し、アキシュの家来たちはダビデの意図を疑った。危険を感じたダビデは、狂気の振る舞いを演じて難を逃れ、ユダの荒野に向かった。後に、ダビデは一軍を率いてアキシュのもとに行った時、ダビデはペリシテ軍の部隊として受け入れられることになる(27章)。

【土曜】 サムエル記第一22章~24章

【22章】

 ダビデはアドラムのほら穴に逃れてきた。そこへダビデの兄弟たちや親族、そしていろいろな事情で困っている人たちもやって来て、ダビデは約400人ほどの指導者になった。ダビデは両親をモアブの王のもとに預け、自らは預言者ガドのことばに従って、サウル王の支配するユダの地に帰って行った。
 サウルは、ダビデの逃亡を祭司アヒメレクが助けたことを知り、アヒメレクが住むノブの町の祭司たちを皆殺しにした。しかし、アヒメレクの息子エブヤタルは難を免れ、ダビデのもとに逃げ込んだ。彼はダビデの祭司として仕えることになる。

【23章】

 ダビデのもとに、ペリシテ人がケイラを攻めているという知らせが入った。ダビデが主にみこころを伺うと、「ペリシテ人を打ち、ケイラを救うように」ということだった。ダビデはそれに従いケイラを救った。そこにサウルがダビデを捕らえようとやってきた。ダビデはケイラから逃れ、ジフの荒野のホレシュとどまった。そこにヨナタンが会いにきた。ダビデがそこにいることがサウルに知られたので、ダビデはそこからマオンの荒野に行った。サウルがダビデを追って来たが、そのときペリシテが侵入したことがサウルに告げられたので、サウルはダビデを負うことをあきらめ帰っていった。ダビデは救われたのであった。

【24章】

 エン・ゲディの荒野にある洞穴に、ダビデたちは潜んでいた。それとは知らず、ダビデを追ってきたサウルがその洞穴に用をたすために入ってきた。「今こそ、主があなたに、サウルのいのちを渡された時です」という部下のことばに、ダビデは剣を手に立ち上がったが、サウルの上着のすそを切るだけにとどめた。ダビデは、主に油注がれた王に手をかけようとしたことに心を痛めた。
 洞穴から出たサウルに、ダビデはサウルの上着のすそを切り取ったことと、サウルを殺さないことを告げた。ダビデは一切を神の御手にゆだねたのである。これを聞いたサウルは、ダビデが王になることを確信し、そうなった時に自分の子孫が根絶やしにされないよう主に誓うことを頼んだ。ダビデは誓い、サウルは家に帰って行った。